バカ物語「斜め屋敷の怪人」
「あるところに、占星術師がいたんです。この人の占いはよく当たるというので、流行っていて、自分の人生の指針に、とか言って活用している人が多かったんですけども。
この占いには、実は意外な落とし穴があったんです」
「なにぃ?」
「新本格っぽい」
「ミステリーっぽい展開になったな」
「えーっとぉ...その落とし穴というのは、見てもらった人はみんな死亡してしまう...」
(一同、爆笑)
「つまり、いつ死ぬとかを当てるんだ」
「それがよく当たると」
「しかし、そんな予言しかできない」
「ところで、その占星術師には助手がいて」
「で、その人も占星術師に見てもらったんです」
(一同、笑)
「当然、死んでしまったんですけど。その、殺された状況が密室だった。そして探偵が現れてですね。その占星術師にこう言ったんです。
『お前がやったんだ!』」
「ああ、なるほど」
「こりゃ、まっとうだよね」
「『ちょっと待ってくれよ兄さん』
と、兄弟の刑事なんですけど。兄弟って言ってもひとりなんですよ。
(黙ってカードを出す)」
(一同、笑)
「ややこしくなってきたな」
「で、いろいろ聞いてみると、確かに密室は密室なんですが。最初に発見されたのは。その部屋なんですが、何もない部屋なんですね。ただ、人形だけがあった。人形と被害者だけが、その部屋にいた」
「うーん、ミステリーっぽい」
「その占星術師は、占星術って言っても西洋のじゃなくて中国系の占いで、
『お前、名前は何と言うんだ?』
と聞くと、名前はゼン・インという中国人で。
『やっぱりゼン・インが犯人だ!』」
「と、シャム双生児の兄の方は決めてかかっていて。で、密室だとか言っても、どこかに出入り口があるに違いない。
『よし、じゃあ屋根裏を探してみるぞ』
と言いました」
「で、ですね。屋根裏を探している時に、兄に反対する弟刑事がですね。ひとつの回答を得たと」
「早いなあ」
「『犯人、わかっちゃいました!』
と。結論に至ってしまったんですね、彼が。その結論とは何か...どうぞ」
「ひでー!」
「とにかく結論に至ったと」
「それはさておき、そのころ...」
「そういう手もありますね。まだ登場人物も少ないし」
「ここで、大いなる見落としがあったんです。実は、このお屋敷には、使用人A、B、Cの3人がいたんです」
(一同、爆笑)
「それで、お兄さんの方がしばらく熟考した後に。
『わかった。この世には不思議なことなど何もないのだよ。
犯人は、双子』」
「えええーーっ!?」
「自分で自分を」
「『兄さん。子供じゃないんだから、冗談やめてよ』
などと、兄弟漫才やりながら。
しかし、これではあまりにも情報が少なすぎる。普段の占星術師の素行も調べないことには。それで、町に出て、この占星術師のことを知っている人を探してみるんですよ。
以前の犠牲者というか、死んでしまった人の周辺を洗って、ひとりの暴力団関係者に行き当たる。
で、彼のところに色々と聞きに行ったんですけど、
『あぁ? めんどくせぇよ。話すことなんかねぇ。もう死んじまったんだし』
と、軽くあしらわれてしまいます。
『そこをなんとか、言ってくれないかね。我々も、捜査に行き詰ってんだよ』
『まあ話してやってもいいけど、交換条件だな。わかる? 金!』」
「『何を言ってるんだ。俺は刑事だ。そんなことができるか! だが、代わりのことならできるぞ』
と、言って、おもむろに服を脱ぎだして半裸になる」
(一同、笑)
「『やめろこら、眼球が腐る!』
とか言いながら目隠ししてるんですけど、指の間から、こっそり覗いていた」
(一同、笑)
「異形のものに惹かれるってのは、ある意味、横溝っぽい」
「ところで、まだ男の刑事かどうかも決まってなかったよね?」
「兄さん、って呼ばれてなかった?」
「ワードにかかってないと未確定、のルールは有効?」
「ああ、別にいいんじゃない」
「まあ、しょうがない。と、いうことで、これは祟りじゃないか、と言い出した」
「えー?」
「すげーなあ。警察の公式見解が?」
「いや、やくざの方が」
「勝手に言ってるんでしょ。やくざが」
「まあ、それはそれとしてですね。そのころ、町の方では、少年探偵団が同じことを調べていました」
「ちなみに、このシャム双生児の刑事。男と女の兄弟で、兄と妹なんです。名前が、アサミとミツヒコ」
(一同、笑)
「で、少年探偵団の方。警察の見落としていたことがわかるような、占星術に詳しいオカルトマニアがいたんです。それで、警察とは別の視点から捜査することができた」
「そのアサミとミツヒコですが、肌の色が違う。」
「ええー?」
「シャム双生児なのに、男女で、肌の色が違う」
「それ、お前はシャム双生児だって言われたけど後で無理やりくっつけたんじゃ」
「ブラックジャックでさ、お母さんと子供をくっつけちゃう話があったじゃない。あんな感じで」
「実は、紐で縛ってある」
(一同、爆笑)
「ええええー!?」
「騙されてるんじゃねーのか、こいつら」
「腰かなんかを紐で縛って、いつもヨタヨタヨタって」
「殺された助手なんですけど、少年探偵の調査で、彼女がいたことがわかった。
彼女の名前はオリエと言ったんですけど、助手は彼女のことを、親しく『オリエン』とか呼んでたんです。
で、殺された当日も、助手とオリエンは、オリエンと急行に(??? 乗る予定だった?)」
(一同、笑)
「そのことをつかんだ少年探偵は、そのオリエンとか言ってる奴に、
『あなたは、恋人が殺されたことについて知っているんでしょ?』
と言うと、オリエンが
『な、何を証拠にそんなこと言うの!?』」
「自分たちをシャム双生児だと思っているのは、実はミツヒコの方だけなんですよ。アサミが、そういう風に思い込ませている。
だから、もしかしたら兄妹ですらないかもしれない」
(一同、笑)
「ああ、なんか設定がどんどん凄くなっていく」
「君といつまでも一緒にいたいから、と」
「時々、ひとりになった時に、アサミが...」
(一同、爆笑)
「...『私は悪い女ね』
とか言う」
「ひとりになる時って...」
「文字通りひとりに」
「風呂とかは、紐をほどいて」
「ミツヒコ、ただの馬鹿じゃん」
「しかも刑事だぜ、こいつ」
「で、それはともかく。
占星術師のゼン・インの屋敷なんですが、これは、設計図とかを調べた結果、斜め屋敷と呼ばれている」
「その斜め屋敷なんだけど。今まで舞台がどこだか言ってなかったんで、みんな都会だと思ってるだろうけど、実は山ん中なんです。山ん中の一軒屋で」
「で、斜面に建ってた」
(一同、笑)
「捜査に協力してもらうために、関係者一同をアサミとミツヒコが集めて。集めたのはいいんだけど、季節が冬で。吹雪の山荘に、みんな閉じ込められてしまった」
(一同、笑)
「山の中で」
「こりゃ、新しい殺人事件が起こりますよ」
「ミツヒコは、また新たなことを考え付いたらしくて。この奇怪な事件の犯人は、やはり彼しか考えられない。彼とは...
『ルパンだ!』」
「ええー?」
「無理だよー」
「ルパンて、人、殺さないんじゃなかったの?」
「でも、ミツヒコ バカだし」
「バカだから」
「とりあえず状況整理すると。冬の、吹雪で閉ざされた斜め屋敷に、今、出ている関係者と言うと
アサミ、ミツヒコ刑事と
ゼン・インさんと
少年探偵団と
オリエさんと
召使いA、B、Cと...
ミツヒコは、この中にルパンがいる! と考えているんですが。そもそもかなり有名で、人の死を嫌がるという。
で、占い師が関わっている、政財界の上の方にも占い師の能力をあてにしている人たちがいるんですよ」
「政敵とかをたぶらかして、『あの占い師はよく当たる』とか言って占わせるんですよ」
「なるほどなるほど」
「ああー」
「それ、占いじゃなくて呪殺だよ」
「だからですね、この事件をこれ以上追うなと警察に圧力がかかってるんですよ。しかも、皇室から。皇室の、迷いの宮殿下という方から。まあ迷いの宮殿下だか親王だか知りませんが、そういう宮様からですね。この事件をこれ以上追ってはいけません、と圧力がかかってるんですよ。
だからこそ、閉ざされた吹雪の山荘にみんなを集めて、一気に解決するんだと。アサミとミツヒコ刑事は焦っているんです。
と、そこへ新たな悲劇が」
「ところで、アサミとミツヒコと、2人とも警察官としての資格は持ってるんですか?」
「そうじゃないんですか」
「今んとこ、そういうことになっている」
「最初、探偵って言ってたのが、いきなり刑事になったんじゃないの?」
「刑事なのは、どっちなんですか?」
「どっちもでしょ」
「基本的には、アサミとミツヒコと1人という状態で刑事になってる」
「弟刑事になっているはずでは? ということは、お兄さんじゃなくてお姉さんなんですか?」
「最初、兄さんと言っているから、兄と妹なのでは」
「まあ、その辺、深く考えないということで」
「兄妹かどうかも怪しいから」
「その悲劇とは!
アサミとミツヒコは、本部から援軍を呼んでいたんですよ。等々力警部を呼んでいたんですが、猛吹雪で行方不明になってしまったのです」
(一同、爆笑)
「等々力警部が、来る予定だった、と」
「それが悲劇なんですね」
「駅を出て、ここに来るという連絡はあったんだが」
「まだ、駅から2日かかるよ、とか」
「等々力警部が、吹雪の中を一生懸命進んで行くと。そこで、まあ、吹雪をしのぐために、そこらへんにあった洞窟に入って。その洞窟の奥の方へ延々と進むと、出口があったんです。
その出口の方は吹雪もなくて。もの凄く景色のいいパノラマの広がる場所でした」
「そのパノラマと思ったところは、お屋敷の大温泉だったんです。ジャングル風呂みたいな。
等々力警部がかきわけかきわけ入っていくうちに、なんか、女の人がお風呂に入っている。で、よーく見てみると、あれは同僚の刑事の上半分...」
「アサミさんね」
「あっ! と声を出して、その大変な事実の目撃者になってしまって、『こりゃいかん、こりゃいかん』と洞窟の中を走って逃げていくんですね。
すると、吹雪の吹いている洞窟の入り口に、ひとりの人影が立っていて。
『見てしまいましたね、等々力さん』
と、言っている彼が小林君なんですが」
「小林君か!」
「急に出てきたな」
「まあ少年探偵団もいたし」
「で、特殊警棒を手に、等々力警部の前に立ちふさがったんですが」
「なぜだ!?」
「小林君と、アサミとミツヒコ刑事との関係は?」
「小林君が秘密を守ろうとしているわけでしょ」
「等々力警部の方は、その意外な状況にうろたえるわけですね。
『なんで、小林君がこんなとこに?』
で、特殊警棒を手にした小林君に立ち向かえるのかというと。まあアレフガルドやったことある人ならわかると思うんですが、身の回りの物を失ってるんで、こちらは着の身着のまま、何も持っていない。このままじゃいけない!
周りに何かないか、と見回してみると、小林君は抜け目無く近寄ってガツンと一発、麻酔をかましてしまうわけです」
「等々力警部は置き去りにされてしまって、小林君は何事もなかったかのように、昔、貴族の山荘であったという屋敷に戻っていきます」
「斜め屋敷に」
「最初に迷いこむところがジャングル風呂っていうのも」
「そろそろ、視聴者が退屈するころだから」
「それで入浴シーンを」
「小林君が、
『等々力警部は気絶させて洞窟の入り口に置き去りにしてあります』
と言うとですね。
『よくやったわ、小林君』
と言って、アサミは全裸になって」
(一同、大爆笑)
「さっきは半裸で、今回は全裸か!」
「二巡目のカードが全裸だった時は、どうしようかと」
「半裸と全裸だったら、なんとかコンボが作れたかも」
「半裸の刑事に対して、ヤクザが全裸とか」
「視聴者の方は、半裸になった状態で、これは偽のシャム双生児だと気がついてるわけですね」
「小林君、何なんだろうね」
「アサミにたぶらかされてるんでしょう」
「人を騙すのがうまいんだ」
「ひとりの男をシャム双生児だと騙すか」
「クリティカル成功しなきゃ無理でしょ」
「そのころ、屋敷の屋根裏には、“屋根裏の散歩者”と呼ばれた、怪盗ルパンが」
「ルパン、いたんかい!」
「さっきのメンバーの中にルパンがいたんじゃなかったの?」
「あの付近にいない人はいますから」
「要はミツヒコの推理が間違っていた、と」
「いや、そうでもないでしょ」
「屋敷の中にいた、と」
「この中にいる、と集めた中の誰かかもしれない」
「ルパンがいたのは本当だった、と」
「風呂入ってるぐらいだから、みんな動いてるんだし」
「等々力警部はどうなったの?」
「気絶して転がされたまま」
「それ、死んじゃうんじゃ」
「ルパンとしては、これは自分のやったことではない。自分のやったことではないのに自分の名を出されて、たいへん不名誉なこと。と、言うわけで
『じっちゃんの名にかけて』」
「ああ、なるほど!」
「三世なわけですね」
「日本だしなあ」
「日本とは限らないけど」
「日本チックな名前しか出てこない」
「その、冤罪をとく為に頑張ろうとしていたのですが。今、この時間帯は、真夜中です。彼は大変に、怪盗でありながら夜に弱くって。夜に弱い。夜に弱いのに、なぜ夜に活躍できるのかと言うと。実は彼は、夢遊病だったのです」
(一同、爆笑)
「まるで何かが乗り移ってるような働きをみせるので、高名ではあるんだけれども、今の状態も、目が覚めると忘れてしまう」
「これ、屋根裏の散歩者じゃなくて、ただ徘徊してるだけ」
「確かに、別の意味で怪盗だ」
「新本格らしくなってまいりました」
「えー?」
「ちょっと話を少し戻しまして。アサミとミツヒコの方。ミツヒコはなぜ、シャム双生児であると騙されていたか。実はめくらであった」
「えええええーっ!?」
「でも、わかんない? ...まあ、いいや」
「しかも刑事」
「でも、ありますよね。盲目の刑事とか」
「比喩的に、じゃないの?」
「確か、何か見たことによって推理するとか、そういうシーンなかったよね」
「新本格だなぁ」
「叙述トリックか」
「ルパンの方ですが。夢遊病で動いてるんですけども。実は、ある人物のゴムマスクをつけていました」
「その、ゴムマスクをつけて屋根裏を徘徊している姿が、一部に目撃されてしまうわけですよ。で、ここの屋敷の主のゼン・インが、アサミとミツヒコに対してキレるわけです。
『いい加減にしてくれ。こんなところで、怪しい者も現れたのに。我々はいったいどうなるんだ』
などと言うんだけど、ミツヒコの方は
『ま、今日中には解決してみせますから』」
「でも、真夜中です」
「だから、あと数時間で」
「いやいやいや。日付が変わったばかりなら」
「24時間以内でオッケー」
「で、とりあえず、主要な人物をホールに集めるわけですよ。集めた人たちを前に、解決前の語りを始めます。
『ゼン・インさん。あなたは怪しい中国人のような振りをしていますが、あなた身分を隠していますね。あなた、日本の大学出てるでしょう。国士舘大学に、あなたが在籍したという記録があります』」
「じゃあ、偽名なんだ」
「ゼン・インの秘められた過去が」
「国士舘大学出身の占星術師」
「一方そのころ、等々力警部は。目が覚めて、自分が洞窟の入り口近くに転がっているのに気がついた訳です。このままじゃ凍死してしまう。とにかく洞窟の奥に戻って暖かい風呂の方へ。すると、電気が消えてて真っ暗で。手探りで探っていると、そこに鏡がある。鏡だと思ってたのに、向こう側が見えるわけだ。マジックミラーがあって、こちらがわが暗くなってるから」
「風呂場側から見えるマジックミラーって」
「逆じゃん」
「いや、明るさ変えればいいんだから」
「その向こうから女の声が」
「女の声は、実はアサミだったんです」
「はっきりわかってる女って、アサミだけでは」
「いや、オリエンもいるでしょ」
「なぜ、彼女が悲鳴をあげたかというとですね。謎解きを始めたので、召使のA、B、Cが、みなさんお茶でもと言ってお茶を運んできたんですけれども。なんと彼女が飲んだお茶には毒が入っていたんです」
「そして、死ぬ間際に彼女は」
「死んじゃうのか!」
「何かを話そうとするんですけど。でも、その言葉は明瞭な発音とならず。その意味は深い霧の中へと隠されてしまいます」
「それで、ミツヒコも一緒に苦しみだすんですよ。
その時、集めた部屋の中に怪人が。あの、ゴムマスクをつけた。相変わらず徘徊してる。
で、ミツヒコもアウト!かと思われたが、死んだのは彼女だけ」
「まあ当然だね」
「いきなりアサミが死んじゃって、
『ああっ、なんてことだ!』
と、ゼン・インが非常に驚いて...驚いているというよりも悲しんでいるという感じで。
実は、アサミはゼン・インの娘だった」
「娘ね」
「なんか、えらいことに」
「ミツヒコは違ったんだ」
「ミツヒコは、
『そうか、やはりな』と」
「やはり、って」
「いい加減、気づけ」
「アサミだけ、この人の娘だったの?」
「か、どうかはまだわかんない」
「ミツヒコは、
『実は、彼女が私とシャム双生児ではないということは、私にはわかっているのです』」
「そうか、お見通しか」
「騙されたふりをしている」
「じゃ、しょうがねえ、死んじゃったし、とか言って紐ほどいてんのか」
「ひどい」
「だいたい、悪い奴がわかってきたな」
「ところがですね。みんなアサミだけが倒れたと思ってたんですけども。召使が配ったお茶に何か薬物が入っていたらしくてですね。全員が次々と苦しみ出すんです。全員が次々と苦しみだして、バタバタバタと倒れてですね。結局、誰もいなくなったんですよ」
「怪人は大丈夫だよね?」
「等々力警部も残ってる」
「ところが。バタバタバタとみんな死んだと思ったんですが。実は仮死状態だったんです。みんな...まあ、みんなかどうかわかりませんが。お茶の中に入っていた薬物で、死んだと思っていた中にですね。仮死状態でボーッとしてる奴がいるんですよ」
「配った人は?」
「配った人は、まあ無事ですね。A、B、Cが無事なのか、AかBかCが無事なのかはともかく。今は、そういう状態です。
配った人と、ゴムマスクの怪人と、等々力警部だけが無事。あとは仮死状態」
「この集まった広間ってのは、風呂場のとなりなんだよね」
「いやな作りだなあ」
「斜め屋敷だから、こーいう床になっていて、それで」
「中まで斜めに作らないって」
「それについても、何も言われてないから」
「大広間から風呂場が覗けるんでしょ」
「貴族がパーティとかひらいて『どうですかな、あの娘たちは』と」
「そこに警部が遅ればせながらやってきて。
『なんてことだ。こんなことでは、事件の解決は不可能ではないか』」
「召使い3人とも、飲んでいなくて無事だということで。その3人に事情を聞こうとすると。3人が突然、逃げ出してしまう。警部、追いかける! 3人は逃げる!
捕り物帖です」
「等々力警部 捕り物帖」
「関係なさそうだけどな」
「ロクに名前もない奴らだし」
「脇役が怪人だったとか」
「でも、なんで毒を盛ったのか」
「ねえ」
「しかし、彼らは人間です。こんな寒い中、狭い中で走り回っていては、いずれ息が切れてしまいます。しかも、警部は百戦錬磨の警察官でありますから、もちろん捕まえることなどお茶の子さいさい。彼らは捕まってしまいました。
彼らは叫びます。
『弁護士を呼んでくれ! できれば、ペリー・メイスン クラスがいいな』」
「で、弁護士が来ました」
「ええーっ!」
「吹雪じゃないの?」
「で、等々力警部はペリー・メイスン級の弁護士と話をしてるんですけども。ゴムマスクを被った怪人が、そこへノソノソと」
「まだ、寝ぼけてんのかよ」
「『ようやく目が覚めた。等々力さんというのはあなたかな? 私は...まあ、仮にルパンと言っておこう。この事件について、有力な手がかりを知っている。この事件は、殺人事件ではない』」
「『ゼン・インとなのる中国人の助手。彼が死んだ原因は転落死だ』」
「『斜め屋敷にいれば、よく起こることだよ』」
(一同、笑)
「斜め屋敷じゃなぁ」
「ここで占ってもらった人、みんなあれか」
「みんな転んで」
「占ってもらって、帰りに廊下とかで」
「勢いよくゴロゴロゴロ〜とか転がって、突き当りの扉が開いていたりして」
「怪人は、徘徊しているから、そこらへんのことがよくわかるんだ」
(一同、爆笑)
「でも、お茶飲んで死んだのは殺人事件だよな」
「でも意識たもってるし」
「未遂とか」
「『じゃあ、いったい、この倒れているみんなはどういうことだ!』
『ああ、あれは、私が薬を盛って、仮死状態になってもらった』
『なぜ、そんなことを?』
またぞろ厄介な面倒くさい訳のわからないことを言い出しましたが、)
『そうか...これが新本格ってやつか!』
と、等々力警部はつぶやきます」
「たたみかけるように謎を解き、真の謎がどこにあるかを隠す。まさに木を隠すには森の中といったところか」
「結局、事故だってことがわかって。あとは後日談?」
「小林君は何だったの?」
「解決編、ってことでいいですか?
アサミというのは実は本名ではなくて。ゼン・インさんの本名もわからないんですが。ゼン・インさんによると。彼女の本名はコトノ・イトさんという」
「ゼン・インさんがこのような稼業をするにあたり、自分よりも上の格の占い師さんに相談をしましたと。その時、
『あなたが占い師として立つのならば、奥さんと別れて、娘をナイル川の巫女さんに引き渡しなさい』
と言われたので、泣く泣く自分より先輩の占い師さんとこへ養女に出しました」
「で、その占い師さんという人が色々とややこしい人で、アサミという人格を彼女の中に入れて、そういう人格に作り上げてしまいました、と」
「似たような奴がいたと」
「同じように作られたのが、ミツヒコだったけど、アサミが先に真相に気づいちゃったと」
「親が占い師で、息子を立派な刑事にしたいと」
「いや、親が警察官で、占い師のところにいって立派な刑事にするにどうすればいいか」
「この娘と結びつけなさい」
「この娘はエジプトで修行してるから、色が黒いけど気にしないで」
「そうか、黒い方がアサミだったんだ」
「浅黒いから、アサミ」
「白く光り輝いてるから、ミツヒコ」
「名前が先じゃねーのかよ!」
「で、解決はしたんですね?」
「えー? ...まあ、一応...」
「事件の方は解決しましたので、画面の方から人がいなくなっていって。そして、誰もいなくなる。で、『×ボタンを押して、終了させてください』」
(一同、拍手)
「マルチストーリーのゲームだったんだね」
「ひとつのルートしか見てないんだ」
「シナリオたてた人、途中で逃亡したとか」
「不条理ルートだったんだ」
「別のルート通ると、明らかになる情報とかも」
「アサミのハッピーエンド・ルートとか」
「オリエンの謎ルートとか」
「ってか、主人公、誰だったんだよ」
「等々力じゃねーよな」
「きっと僕は怪人だと思う」
【トップ】
【「かんぽ」の部屋】
【バカカード】