不思議の国でありんす

(「例のアノ本 第2号」掲載)


 「Once Upon A Time」は、おとぎ話創造カードゲームです。 プレイヤーそれぞれが自分の勝利を目指して争いながら、 それでいていつの間にか、 ひとつの物語ができてしまうという非常にユニークなシステムを持っています。
 以前、メイルゲーム「平成偉人伝ガリレイザー」の機関誌「月刊ゲムレ」に、 色々なゲームを紹介する「これやってみよう」というコーナーがありました。 一度、そこで取りあげられたこともある傑作です。

 と、言うわけで、プレイの模様をレポートします。


 ゲームが始まると、 各プレイヤーには一定枚数の「Once Upon A Time」カード (または「Storytelling」カード ……とルールで呼ばれているが、通称「単語カード」) と、1枚の「Happy Ever After」カード (または「Ending」カード ……とルールで呼ばれているが、通称「オチ・カード」) が配られます。
 勝利条件は、 単語カードをすべて使い切って、 なおかつ物語を自分の オチカードのエンディングにつなげる ことです。
 ゲームは、全員でひとつの物語を作りながら進行します。 単語カードを使用するためには、 その物語にからめて単語カードの内容を喋らなければなりません。

 以下、セリフ中の【】は、使用した単語カードです。


第1話「 孤児の盗賊と、その父親の話

 第1プレイヤーは森脇広平さん。

森脇広平昔々、あるところにひとりの盗賊がいましたThief(盗賊)】。 彼は孤児でしたOrphant(孤児)】。 そのため、世間から偏見の目で見られ、いつも追われていましたChase(追跡)】」
宮崎智博 「泥棒やってりゃ、追われるだろう。孤児じゃなくたって」
斉藤妙子 「それ、偏見と違う!」
森脇そのため、コソコソ隠れて暮らすようになり、 そのため盗賊になったのですHidden(隠された)】」
斉藤 「先に、ラベリングがあったんですね」

 第1プレイヤーから、単語カードを使います。他プレイヤーからのインタラプト(後述)が発生しない限り、手番のプレイヤーは何枚でもカードを使って話を続けられます。場合によっては、そのままカードを使い切ってオチにつなげ、一気に勝利してしまうことも可能です。もっとも、普通は他のプレイヤーが、そんなことはさせないのですが。
 「インタラプト(割り込み)」とは、他プレイヤーの手番の時に無理矢理、自分の番にしてしまう行動のこと。その方法は、2種類あります。

宮崎 「あのー……コソコソ隠れて過ごしているというので、 【Frightened(おびえる)】 でインタラプトはよろしいでしょうか」

 第1のインタラプト方法。
 自分の手札の内容と関連したことを他人が喋った場合に成立します。例えば、「王子」のカードがあるとき、手番の人が「王様には息子がいました」と言えば、手札の内容(王子)についての言及(王様の息子)があったとしてインタラプトが成立します。
 宮崎は、森脇さんの「コソコソ隠れる」という言葉が、自分の「おびえる」カードの内容に関連していると主張してインタラプトを試みました。

斉藤 「コソコソ隠れているといっても、おびえてないと思います」
宮崎 「ダメ?」
平本晶子 「私は、いいと思うよ」
宮崎 「だって、コソコソ隠れているんだったら、おびえていると私は」
斉藤 「おびえているとは限らないと思います」
宮崎 「んー、じゃ、いいや」

 インタラプトが成立するかどうか判断が微妙な時は、プレイヤーの協議にかけられます。
 この例の場合、インタラプトは却下されました。

千葉慎也 「どのみちインタラプト。Aspectで」

 第2の方法。
 すべての単語カードはジャンル分けがされています。 すなわち Character(登場人物)、 Place(場所)、 Event(出来事)、 Item(物)、 Aspect(状態) の5種類です。 また、この5種類のジャンルに対応した 「インタラプトカード」が存在します。 他人が単語カードを使用した時に、 それに対応するジャンルのインタラプトカードを使用すれば、 インタラプトが成立します。
 例では、森脇さんの使用した単語カード 【Hidden(隠された)】 のジャンルが Aspect だったので、 千葉さんが、持っていた Aspect のインタラプトカードを使用し、 割り込みを成立させました。
 インタラプトにより、手番は千葉さんに移ります。

千葉その盗賊は、小屋に住んでいましたCottage(小屋)】。 その小屋で、その盗賊は眠っていましたSleep(眠る)】 ……ごめん、パス」

 インタラプトが発生しなくても、 手番のプレイヤーが途中でパスを宣言すると、 順番は隣のプレイヤーに移ります。
 なお、インタラプトされたりパスしたりして手番が終わった人は、 単語カードを1枚取らなければなりません。 使わなければならないカードが増えて勝利から一歩遠のくのです (勝利するためには手札を全て使用しなければならないので)。

 手番は、千葉さんの隣の斉藤さんへ。

斉藤小屋は、森の近くにありましたForest(森)】 。森には、年老いた人…人でいいよね、男とは言わないでいいよね… 年老いた人がいましたOld Man(老人)】。 その人は、とても美しかったBeautiful(美しい)】」
宮崎 「Aspectでインタラプト」

 「美しい」がAspectのジャンルだったので、 Aspectのインタラプトカードを持っていた宮崎が手番を自分にする。

宮崎その年老いた人は、非常に美しいんですが、 あまりにも心が純粋で、みんなに騙され続けていたので、 いつか乞食になっていましたBegger(乞食)】。 乞食になったその老人には、実は彼には……男です。 その老人は……彼には息子がいたんですChild(子供)】。 息子ってのが、この盗賊となっている男

ちょっと待て。盗賊は孤児と違うんかい!


 何をほざいているのだ この男は(って、自分だけど)。
 明らかに、おかしな展開です。 だが、誰もその事実に気付かなかったので、 ゲームはそのまま先に進んでしまいました。 当の本人も、これを書くために録音を聞き直すまで全く気づきませんでした。

斉藤 「だから近くに住んでるんですね」
宮崎しかし、長い間、行方不明になっていました Long=Lost(長い間、失われていた/会えなかった)】。 でも、噂で、盗賊になっているらしいと聞いて
斉藤 「噂って、すぐ側にすんでるやんけー!」
宮崎純粋な心を持っているこのお父さんは、 なんとかして息子を盗賊から足を洗わせたいと思っていたんだけど、 ある日、とうとうその盗賊が とっ捕まってしまったということを聞きました
平本 「これって、牢屋 【Prison】 で使えます?」
宮崎 「ああ、『とっ捕まった』で『牢屋』なら、いいんじゃないかな」

平本牢屋に閉じこめられた盗賊は、ある物を盗んだStolen(盗まれた)と言われて、突き出されたものが、 実はその美しいお父さんの人のものでした。 で、運よくそのお父さんが呼ばれてきましたLucky(幸運な)】」
斉藤 「ちょっと待って。お父さんということは親ですね」

 【Parent(親)】のカードでインタラプト。

斉藤お父さんは、乞食だけでは暮らしていけず…… だいたい、森に住んでるんだったら、 木を切ったり狩りをやったりして暮らして行けばいいと思うんですけど、 まあとりあえず……斧を用いて木を切って、 それを燃料にしたり町に持ってきて売ったりして暮らしていましたAxe(斧)】。 乞食オンリーってのも、そういないよね」
鈴木響 「これって、同じ単語が出てきたらだしていいの?」
宮崎 「ああ、出していいです」
鈴木 「じゃあ、町 【Town】で」

 「町」という言葉に対し「町」カードという、文句の言い様のないインタラプト。

宮崎 「乞食するだけでなく、町に行ったりもしていました、と」
斉藤 「そもそも、町に行かなきゃ乞食はできねーよ」
宮崎 「だから、乞食したついでに材木売るとか。 だから、材木を売るんだけど、でも心が純粋で人がいいから、 騙されてたいした儲けにならないんだ。足代なんかも出ちゃうから」
斉藤 「ひとつ言ってもいい? だったら乞食だけやってた方が」

 勝利するのに必要なのは、単語カードを使い切るだけではありません。物語を、最初に配られたオチカードの文章につなげなければなりません。
 宮崎の持っていたオチカードは
「……このことからわかるように、最後は常に純粋な心を持つ者が勝つのです」
 と、いうものでした。つまり、ここにつなげて終わるには、まず「純粋な心を持つ者」を登場させ、そしてその人に幸せになってもらわねばならないのです。しつこいくらいに話の中で「純粋」を強調しているのは、このためです。
 他にも、例えば「2人は結婚しました」というオチならば男女を登場させて恋愛させなければならないし、「二度と彼女の姿を見た人はいません」ならば、女を行方不明にする必要があります。「暴君は倒されました」なら悪い王様を出すでしょうが、「王様は約束を守りました」ならば、王様は善人の方が話をつなげやすいでしょう。こうして、プレイヤーの様々な思惑がぶつかりあい、ひとつの物語は色々な方向にねじ曲げられるのです。

平本 「とにかく、話を進ませてください」
宮崎 「とにかく、森のそばの小屋の」
鈴木 「何の話なんだか、わかんない……」
宮崎 「失礼。全然関係ない話」
斉藤 「物語に関係無い話だったね。気にしないでいいから」

 周囲が好き勝手に喋っていたおかげで、肝心の手番プレイヤーの彼女がすっかり混乱しています。

鈴木町に出てきました……で、カード減らせればいいんだ。 とりあえず……そこで、王様に会いましたKing(王)】」
宮崎 「ほう」
平本 「なんか、暴れん坊将軍」
斉藤 「会う、と言いましたね」

 【People Meet(人々が会う)】カードでインタラプトが入りました。

斉藤王様は、その美しい老人に、コックを探していると言いましたCook(コック)】」

 「コック」カードがCharacterだったので、宮崎がCharacterインタラプトカードを出します。

宮崎料理くらいはできます、ということで、 だったらコックになってもらおうと、 そのお爺さんは台所に案内されましたKitchen(台所)】。 で、心が純粋だから、この人が作る料理というのは、 すごい神々しいというか、神聖な光を発しているというか、 食べただけで幸せな気分になれるんです
斉藤 「それ、マジック・マッシュルーム入ってんじゃない?」
宮崎それで、言われるわけです。この台所は、まるで教会のようだChapel(礼拝堂)】」

 一同、無理なこじつけに、思わず笑。

武野正志 「インタラプト」

武野 「教会のようだったんでしょ。 しかしその台所は、一見教会のように見えて、 実は呪われていたのですCursed(呪われた)】」

 一同、爆笑。

武野そこで作った食べ物を食べた人達は、 みな、気が狂ってしまったのですInsane(気が狂った)】」
宮崎 「息子が忘れられている……」

 で、手番は移って斉藤さんへ。

斉藤そうこうしているうちに、夜になりましたNight(夜)】」

 斉藤さんははここでカードを使い切りました。後はオチにつなげるのみです。当然、そうなるとゲームは終わってしまうので、他の者達は、何かインタラプトできる発言をしないかと機会を狙います。
 カードを使うためには、そのカード内容絡んだ話をする必要があります。が、逆に、カードに無い単語を使って勝手に話を続けることには一切の制限がありません。そこで「カードを使い切ったはいいけど、話がオチにつながらない」という場合、オチに向けて延々と話を作っていかねばならないことが多々あります。つまりそこで、他のプレイヤーがインタラプトするような言葉を言ってしまう危険も増えるのです。
 が、今回はあっさりと勝負がつきました。

斉藤そして、年老いた美しいお父さんも牢屋に入れられてしまいました。 そして、牢屋で、彼らは家族と再会を果たしました

 ここで、彼女のオチカードが明らかにされました。

 『……こうして家族との再会を果たしました』

 です。

一同 「あー、確かに」
宮崎 「息子の方の話もおさまってるし」
森脇 「うまいうまい。でも、これってハッピーエンドでもなんでもねーよ」

 盗賊の息子はとっ捕まったまま救われないし、結局「足を洗わせたい」という父親の願いは叶わないし、善人のお父さんまでが不幸になっています。しかし、確かに再会を果たしているので一同は話の結末に納得し、ゲームは斉藤さんの勝利で終了しました。

 勝負後のコメント。
「斉藤妙子です。一番最初と一番終わりを私が取りました。 私は、一切矛盾をすることなく物語を終えることができました。 さすが私。口先三寸うまいです。ざまあみろです」
「いやあ、でも、ナイスアシストじゃん、俺」
「えー……千葉です……まいった」
「いやあ、最初、息子を牢屋にブチこんだ時、どうしようかと思いましたが 、ものの見事にやられました」
「きれいにオチがついたみたいですねえ」
「宮崎です。あのとき、割り込みがかからなければ、 息子を脱出させてハッピーエンドになってたのに。 城の人はみんな気が狂うし。まいりましたわ」
「ひびきです。あんまり話が綺麗にまとまられると、 あとからどうしたらいいかわかんないです」
「綺麗だけど、ハッピーじゃないよね」
「森脇です。割り込もうと思ったんですが、 ファンタジーのくせに、全然『剣』が出ません」 (「剣」のカードを持っていたが、誰も剣に関することを言わなかったので 割り込めなかった)

「かんぽ」用語辞典
矛盾がない……孤児であるにも関わらず父親がおり、あまつさえ再会まで果たしておきながら、「孤児と思ってたけども実は」といった説明すらないような物語の流れを評する言葉。
 世間一般の用法とは明らかに意味が異なるので、注意が必要。
(同)綺麗にまとまった


第2話「 怪力! 羊飼い娘の冒険

 続いて、第2戦。初回の勝者、斉藤さんを第1プレイヤーとして再開しました。

斉藤昔々、ある所に島がありましたIsland(島)】。 島には川が流れていましたRiver(川)】。 その近くでは、戦いが起こっていましたFight(戦闘)】」
鈴木 「一気に終わりそうだな」
斉藤 「どうやって終われって……パス」

森脇その戦いは、王冠を巡っての戦いでしたCrown(王冠)】。 その王冠を手にした者は、幸せになれると言われているのですHappy(幸福な)】」
柳智弘 「“ひとつの王冠は全てを統べる”」
森脇その戦闘を、遥か遠くで眺めている者がいましたFar Away(遥か遠く)】。 その、遠くで見つめている者は、その戦いの結果によっ て何かが明らかになることを見張っていたのです Someone Is Revealed(何かが明らかになる)】。 うーんと……パス」
宮崎 「な、何かって何ですか!?」

 他人が無責任に続けた話をまかされ、後の順番の人が頭を抱える……というのは、このゲームでよくある光景です。

鈴木その王冠以外にも財宝があることがわかりましたTreasure(宝物)】。 その財宝は、塔に隠されている、ということでしたTower(塔)】。 その塔は、山の奥に立っていましたMountain(山)】。 その財宝の中には、魔法のリングがありましたRing(指輪)】 ……えーと……」
宮崎 「じゃ、Itemでインタラプトしとくか。悩んでるんだったら」

宮崎と、いうようなことを、遠くから眺めていた彼女は ……女性です……彼女は、自分の部屋の窓から眺めているうちに 察してしまいましたWindow(窓)】」
斉藤 「すごいぞ。戦いを見ているだけで、そこまでわかったのか」
宮崎その王冠と指輪の両方が見つかれば、両者で分けあうことができて、 戦いは終わるのに。だけど、このまま戦いを続けていて誰かが傷つくSomeone Is Hurt(誰かが傷つく)】。 ああ、なんて悲しいんでしょう……と、いう風に嘆いておりました。 で、嘆いていたんですが、私が乗り出して戦いを納めよう、と考えました。 普通は、話したって、人は聞く耳を持たないかもしれないけど、 私が行けば大丈夫。だって私は、とっても強いんですものVery Strong(とても強い)】」

 一同、笑。

宮崎 「で、パス」

彼女には、とても賢い動物がいましたVery Wise(とても賢い)】。 その動物が語りかけましたThis Animal Can Talk(動物が喋る)】。 で、終わり」

 動物は喋る。何を喋ったかと言うと

平本ようするに、みんなが愛し合えばいいんじゃないか Two People Fall In Love(2人が恋に落ちる)】」
森脇 「なんて動物だ」

 ここで異議があがります。

宮崎 「Two People だよ、このカードは」
斉藤 「2人じゃん」

 つまり、こういうことです。
 戦争だったら大勢が戦っている。大勢が愛し合うのに、「2人が恋に落ちる」というカードはふさわしくないのではないか?
 が

平本 「戦っているのは2人でいいよね」
宮崎 「ああ、そうか。勝手に戦争を連想してたけど、 1対1の決闘でもいいのか」

 ということで、異議は撤回されました。

平本2人とも、愛しあっちゃえばいいんじゃないですかぁと言って、 そうして愛しあわせるには妖精の力が必要ですよ、と 【Fairy(妖精)】」

 パスにより順番が移ります。

千葉 「……と、羊飼いの娘は思いましたShepherdess(羊飼い娘)】」
宮崎 「ああ、遠くで眺めていたのが羊飼い娘だったのか。 で、自分の部屋の窓から見て悲しんでいたと。 『ああ、戦いが起こっている。うるうる』」
武野 「でも、とっても強い」
斉藤 「そうか、それでもともと動物もいるし。羊が喋るのか犬が喋るのか」
千葉で、犬だと思ったんですが、一緒にいる動物は実は狼だったんですWolf(狼)】」

 羊飼いの癖に狼と一緒、という妙な展開に、一同、笑。

宮崎 「羊飼いなのに……」
森脇 「まあ、とっても強いしねえ」
宮崎 「でも、矛盾してると思うぞ」
斉藤 「でも、犬でもウルフハウンドとかいるじゃん」
千葉そして、道を通って、その争いの場所まで行きましたRoad(道)】。 そして、いっそのこと3人で旅をして、 宝を取りに行こうじゃないかということになりましたJourney(旅)】」
宮崎 「それって、人々が会ってますね」

 【People Meet(人々が会う)】 カードでインタラプト。

宮崎で。『2人とも争うことはないんですよ。 私の言うことを聞いてくれれば、王冠も、それともっと素晴らしい指輪も 手に入りますよ。そうすれば、すべて丸くおさまるじゃないですか』  その争っていた2人も、戦わないで済むんだったら、 そっちの方がいいだろうと言ってついていくことにしました。 で、その羊飼い娘が言う。 『私は近道を知っています。この洞窟を通って行けば、 王冠にも、指輪のある所にもたどりつくことができますCave(洞窟)】』  3人は、連れだって洞窟を通って歩いて行った、と」
森脇 「インタラプト。Place」

森脇しかし、その洞窟には罠があったのです
宮崎 「罠ね!」

 カードを1枚も出さないうちに、 【Trap(罠)】 カードにより再度インタラプト。

森脇 「ああっ! しまった、くそっ」

宮崎罠があったんですが、3人は難なくそれを切り抜けました

平本罠を仕掛けたのは、とある王国の王様でした
武野 「王様ね 【King(王)】」

武野その王様の住んでいる王国は、 ボートを使って行かねばならないほど遠くにありましたBoat(ボート)】」
斉藤 「ここは島だー」
宮崎 「ああ、そうか。 だから、その島から外に出なければならないほど遠くにある、と」
武野その、遠い王国は、実は巨人の国だったのですGiant(巨人)】。 そこで、その巨人達は、大きいが故に、非常に暮らしずらかった。 やっぱり、普通の人間ぐらいの大きさの方が良かった。 そこで、小さくなろうとしていましたTiny(小さい)】」
斉藤 「と、いうことはつまり、変身ということですね 【Transformation(変身)】」

宮崎 「小さくなりたいがために、洞窟に罠を仕掛けた、と」
森脇 「なんでや!」
斉藤巨人達が、盗まれるっつーのを警戒して、 あれこれと罠を仕掛けたのです。 その罠のひとつには、近くにくると、その宝を目指す者達が意味もなく争う ……一緒に協力して宝を取ろうとはしないで、 争って俺だけが取るんだ、という戦いにハマるという 罠もありました
宮崎 「それは、『敵』というカードでインタラプトをかけるのは、どうでしょう 【Enemy】」
平本 「いいんじゃない」
斉藤 「そうだよなあ、敵だよなあ」
武野 「敵だねえ」

宮崎と、いう巨人達が仕掛けた罠を、 彼女のお供の非常に賢い動物は、すぐに見抜いてしまいました

 周到に組み立てた話を一言で片づけられ、一同から笑いが漏れる。
 宮崎の手札はインタラプトに使った「敵」カードだけでした。それを使用したことにより手札はなくなり、後はオチにつなげるだけです。

宮崎だから、罠を難なく切り抜けることができた、と。 そうして罠を切り抜けて、彼らは王冠と指輪を手にすることができました。 で、戦っていた2人は王冠と指輪を手にして、 そして愛し合うようになって、戦いはおさまりました。 この無意味な醜い戦いに心を痛め、悲しんでいた彼女は 『ああ良かった。これで、誰も傷つかないで済むわ』と……
千葉 「醜い争いですね 【Ugly(醜い)
宮崎 「うがぁっ!」

 勝利を目前にして、宮崎は手番を千葉さんに奪われてしまいました。

千葉そして宝を手にいれた3人は、嬉しくなって輪になって踊り始めました。 彼らは今でも、踊り続けているのかもしれません

 と、千葉さんはオチをオープンします。彼の方も、単語カードを使いきっていたのです。

『……彼らは今でも、踊り続けているのかもしれません』

 でした。
 こうして、第2戦の勝者は千葉さんと決定しました。


千葉 「最後にドンピシャリで決まりました。千葉でした」
武野 「武野です。巨人からそう流れるとは思いませんでしたね。 なんで罠をしかけたのか、よくわかんないっすね」
斉藤 「斉藤です。やはり愛し合わずに争い合う人々の心にこそ、 醜い罠は存在しているのです」
森脇 「いやあ、罠しかけたのはねえ、牢屋に入れたかったんですよ。 森脇でした」
鈴木 「えと、どうなったんだっけ?」
斉藤 「3人が踊り狂って終わり。宝を盗んで」
鈴木 「ひびきです。なんか狂ってます」
宮崎 「くそー、戦いが醜くなければ勝ってたのに。宮崎でした」
「えー、なんか動物出しただけで終わっちゃいました」
平本 「実は王宮の後の話があったんですけど、 言い間違えて王国と言ってしまって、 話が続けられなくて悲しい思いをしました」



 このゲームですごいのは、各自が争いつつそれぞれ勝利を目指しながら、なおかつ全員でひとつの物語を作り上げられてしまうところです。
 テーブルトークRPGなども、ゲームの目的は全員でひとつの物語を作ることにあります(他の楽しみもあるのは承知してるけど、私はRPGの最大の面白さは物語の創造だと思う)。しかし、物語創造というその点だけを見れば、下手なマスターのTRPGよりは、遥かに洗練されたシステムではないか……と、私などは思ってしまいます。何せ、シナリオ制作者のノーミソが話を考え出すのではなく、ランダムに配られるカードによって話が生まれるため、物語の内容は参加する誰にも全く予想不可能なのですから。

 各自が勝利条件を目指すのも必要なのですが、このゲームの醍醐味はやはり全員の共同作業にあります。ルールにも「勝利に近づいた人を狙いうちして妨害するようなことはやめようね。ゲームの目的は、みんなが楽しむことなんだから」と明記して書いてあります。その点も、TRPGに近いところでしょう。

 このゲームの最大の難点は、ルールもカードもすべて英語であることです。が、一応、手製の日本語訳カードリストはあるので、プレイにさほどの支障はありません(いちいち訳を参照するのは、ちょっと面倒臭いけど)。どこかのゲームサークルが、直訳ではなく、ちゃんとした文学的訳によるカードリストを作ってコミケに出していたはずなのですが、詳しい事はわかりません。
 ゲーム自体の入手は、マニアックなゲームを扱ったお店で。地方についてはよくわからないのですが、関東圏ではイエローサブマリンや書泉ブックマートなどに、時々、入荷されているのを見かけます(ただし、1997年12月末現在、新宿と横浜のイエローサブマリンでは売り切れ)。販売価格は店にもよりますが、いちばん最近では2390円だったのを確認しています。


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