昔々、ある所に乞食がいました。【乞食】
彼は、自分の持ち物を盗まれてしまったので、乞食になったのです。【盗まれた】
その乞食は、かつては王国の勇者でした。彼は勇者として、力強さからその名を世界中に轟かせていました。【とても強い】
その勇者の盗まれたものとは、指輪でした。【指輪】
指輪は、盗まれた後、ある洞窟の中に隠されていました。【洞窟】
場所はわかっていたのですが、洞窟の中にはいけませんでした。なぜかというと、洞窟の前では常に炎が燃えていたので、中に入れなかったのです。【炎】
その炎は、魔法によるものでした。【呪文】
魔法をかけたのは、勇者の名声をねたんだ魔女でした。魔女が指輪を盗み、洞窟に隠して魔法をかけて炎で守っていたのです。【魔女】
かつて勇者だった乞食は、指輪を取り戻すために町へやってきました。【町】
そこで、物知りのお婆さんから知恵を借りることにしました。【老女】
実はその町には、不思議な能力を持った子供がいるのです。その子は、失われた物をどうやって手に入れればよいかを、夢の中で知ることができるのです。【夢】
しかし、身寄りがない孤児なので、その子がどこにいるかわかりません。【孤児】
勇者は方々を探してあるき、やがてその子供を見つけ、会うことができました。【2人の人物が出会う】
そして、洞窟の炎を消すための秘密を、その子供に尋ねることにしました。【秘密の】
魔法を解く方法を聞いた勇者は、洞窟のある山に行きました。【山】
その洞窟の前には、深い川が流れていました。【川】
川は深く、流れも速く、とても渡れそうにありません。途方にくれて周りを見回してみると、向こうの方に塔が見えました。【塔】
そこに、一匹の狼が現れました。【狼】
私が、向こうの岸に連れていってあげましょう。その代わり、条件があります。火が消えたら、同時に、洞窟の横にある木を切り倒してください。【木】
「実は私は、魔法で狼にさせられている人間なんです。あの木さえ切り倒せば、私は人間の姿に戻れるんです」
勇者は、狼の助けを借りて、川の向こう岸に渡りました。そして、先に指輪を手に入れるか、木を切り倒すかを狼と議論しながら歩きました。【議論】
結局、勇者は子供に聞いた方法で洞窟の前の火を消すと、狼の言うことなど聞かずに指輪を探しに行きました。そして、中にあった、隠されていた指輪を見つけました。【隠された】
指輪を見つけ、帰ろうとしたのですが、洞窟の中で彼は迷ってしまいました。【迷う】
迷っているうちに、勇者は洞窟の中で王女様と出会いました。【王女】
王女様は、王子様と一緒にいました。【王子】
彼らは、お忍びで出てきていたので、変装していました。【変装】
変装して、2人は子供の姿になっていました。【子供】
3人で出口を探していると、町から遥か遠くの別の出口にでました。【遥か遠く】
ちょうどそこに、羊飼いの娘が通りかかりました。【羊飼い娘】
狼を見た羊飼い娘は、慌てて逃げようとしました。そこへ、子供の姿をした王女さまが声をかけました。
「この狼は悪い狼ではないんですよ。さっきから、いっしょに話していますから」【動物が喋る】
それを聞いて、娘は安心して近づいてきました。
近くに来た娘に、王女さまはカギを取り出して見せました。【カギ】
「このカギが何だか知りませんか?」
娘は答えました。
「これは、洞窟の中にあると村で代々伝えられていた、喋るカギです」【物が喋る】
しかし、それ以上のことは彼女にもわかりません。仕方なしに、一行はその場を去りました。
そうか、喋るカギなのか...と言って一同が見つめると、カギが言いました。
「そうだよ。おいらは喋るカギなんだよ...いいこと教えてやるよ君たち。さっき、君たちが拾った指輪は偽者だよ。そんなものを持って帰ったって、役に立たないよ」
勇者は言いました。
「えー、もう一度、洞窟に行かなきゃならないのかー」
王子様と王女様も言いました。
「カギがあるんだから、きっと宝の箱があるに違いありません。私たちも一緒に行きましょう」
3人と一匹は、こうして再び洞窟に戻ることになりました。
カギが道案内をします。
「こっちだよ、こっちに行くといいんだよ」
やがて、彼らは宝の箱を見つけることができました。
そして箱を開くと、求めていた指輪(本物)が見つかりました。
ついでに、金銀財宝がざっくざくと出てきました。
よかった、これをみんなで分け合いましょう...と彼らは話していたのですが、帰り道でまた道に迷ってしまいました。
ちょうどその時、いいように利用されてそのまま放り出され、貧乏暮らしを続けていた夢を見る孤児は、また夢の中で彼らが危機に陥っていることを知りました。
彼女は急いで洞窟にかけつけました。
そしてまず、子供ながら必死に力を振り絞って、洞窟の前の木を切り倒しました。
(P:「ああ、そんなものもあったねぇ」)
すると、洞窟の中で迷っていた一行の中の狼が、突然、人間の姿に戻りました。
「ああ、よかった」
実は、洞窟には道に迷わす呪文がかけられていたのです。
その力も消えたので、彼らは洞窟の外に出ることができました。
そして、夢を見る少女と再開しました。
「ああ、君がすべてやってくれたんだね。ありがとう。君は命の恩人だよ。君には世話になった。私たちは財宝も手に入れたし指輪も取り戻した。何か君にお礼がしたいのだが、何がいいだろうか」
「私にはお父さんもお母さんもいません。私の親になってください」
「わかった。おやすい御用だ」
こうして、
彼女が大きくなるまで、彼らが面倒を見ることにしました。
(P:「しかし、最後まで主体性のない勇者様だったねぇ」)